ギター弾きなら、一度は憧れたことがあるだろう?
ジミー・ペイジがレスポールを構えて、あの分厚いトーンを叩き出す姿。Led Zeppelinの楽曲を聴いて「この音はどうやって出してるんだ?」と、アンプのツマミをいじり倒した夜。俺にも覚えがある。もう25年以上前の話だけどな。
で、次に気になるのが「ペイジが弾いてたあのレスポール、どんなギターなんだ?」ってこと。調べ始めると、これがまた沼が深い。No.1だのNo.2だのブラックビューティーだの、本人所有のギターだけでも複数あって、さらにギブソンから出たシグネチャーモデルが4種類。仕様も価格も全部違う。
正直、俺も最初は混乱した。「結局どれがどれなんだ?」と。ネットの情報も断片的で、英語のフォーラムを読み漁って、やっと全体像が見えてきた感じだった。
この記事では、まずペイジの伝説的な3本のレスポール――No.1、No.2、ブラックビューティーの実機について徹底的に語る。そのうえで、ギブソンが公式にリリースしたシグネチャーモデル全4種の仕様・違い・相場を、ギター歴25年の目線で解説していく。
読み終わる頃には、「自分が本当に欲しいのはどのモデルか」がはっきり見えてくるはずだ。

ジミー・ペイジと3本のレスポール――No.1、No.2、ブラックビューティーの物語
シグネチャーモデルの話をする前に、まずは「元ネタ」を知っておかないと始まらない。ペイジが実際に使っていた3本のレスポールには、それぞれにドラマがある。ギターという「モノ」に人生の物語が宿る――それを体現しているのが、この3本だと俺は思っている。
伝説の始まり――ジョー・ウォルシュから500ドルで買ったNo.1
Led Zeppelinのサウンドを語るうえで、絶対に外せない1本がある。通称「No.1」。ペイジの右腕であり、ロック史上もっとも有名なレスポールと言っていい。
このギターをペイジが手に入れたのは1969年頃。売ってくれたのは、後にイーグルスで名を馳せるジョー・ウォルシュだ。価格はたったの500ドル。当時のレートで考えても破格だが、1960年代末のヴィンテージ・レスポール市場はまだ黎明期。今のように1本数億円なんて時代じゃなかった。
500ドル!? 今じゃ考えられないっすね……

だろ? でもな、当時はレスポール自体が不人気で生産中止になってた時代だ。誰もあんな重いギター欲しがらなかったんだよ
このNo.1が1958年製なのか1959年製なのか、実は今でもはっきりしていない。理由は単純で、ネックのリシェイプ(削り直し)を行った際に、シリアルナンバーが消えてしまったからだ。ペイジ本人も「58年か59年か、正確には分からない」と語っている。
ただし、ギターとしての「声」は紛れもなく本物だった。Led Zeppelin IIのレコーディングからこのNo.1が本格投入され、以降のツェッペリンのサウンドを決定づけることになる。
ペイジはこのNo.1にいくつかの改造を施している。
- プッシュ/プルポット:トーンノブを引き上げるとピックアップの位相(フェイズ)が切り替わる仕組みを追加。あの独特な「鼻をつまんだような音」はここから生まれた
- グローバーペグ:オリジナルのクルーソンから、チューニングの安定性が高いグローバー製に交換
- ネックのリシェイプ:50年代レスポール特有の太いネックを、より弾きやすい薄めのプロファイルに削った
特にプッシュ/プルポットによるフェイズサウンドは、ペイジのトレードマークのひとつ。「The Song Remains the Same」のイントロなんかで聴けるあの独特の薄い音色は、まさにNo.1のフェイズスイッチから生まれたものだ。
俺が初めてこのギミックを知った時、自分のレスポールにも同じ改造をしようとして楽器屋に持ち込んだことがある。結果? 配線をミスって1週間音が出なくなった。自分でやるもんじゃないな、あれは。
最も精巧な”相棒”――1959年製No.2の素顔
No.1がペイジの「右腕」なら、No.2は「左腕」だ。1974年頃からステージに登場し始めた、もう1本の1959年製レスポール・スタンダード。
「え、2本とも59年製? じゃあ何が違うの?」と思うだろう。見た目はたしかにそっくりだ。でも、よく見ると明確な違いがいくつもある。
写真で見ると本当にそっくりですよね。どうやって見分けるんですか?



いいところに気づいたな。実はディテールを見れば一発で分かるんだ。ポイントをまとめてみよう
| 識別ポイント | No.1 | No.2 |
| トグルスイッチの色 | 白(ホワイト) | オレンジ(退色した赤) |
| ペグ | ゴールドのグローバー | シルバーのグローバー |
| ボディの傷・打痕 | ブリッジ左下に打痕あり | 比較的きれい |
| 製造年 | 58年 or 59年(不明) | 1959年 |
ペイジは1974年頃からこのNo.2をライブで使い始めた。No.1との使い分けの詳細は本人しか知らないが、楽曲やチューニングによって持ち替えていたと言われている。映像を見ると、曲間でローディがギターを差し出す場面で、ペグの色やスイッチの色を見れば「あ、今はNo.2だな」と判別できる。
ちなみに、俺がツェッペリンのライブ映像を初めて真剣に見たのは20代後半のこと。「永遠の詩」のDVDを何十回もリピートして、ペイジの右手のピッキング位置とか、左手の運指を必死に真似してたな。あの時は、No.1とNo.2の違いなんてまったく気にしてなかった。ただただ「この音を出したい」という一心だった。
盗まれた漆黒の名器――1960年製ブラックビューティー
3本目は、もっとも悲劇的なストーリーを持つギターだ。
1960年製ギブソン・レスポール・カスタム、通称「ブラックビューティー」。その名の通り、全身漆黒のボディに金色のハードウェアが映える、圧倒的な存在感を放つ1本だった。
レスポール・カスタムの特徴は、スタンダードが2基のピックアップを搭載しているのに対し、こちらは3基のピックアップを搭載していること。ネック、ミドル、ブリッジの3ポジションで、スタンダードよりも幅広いトーンバリエーションが得られる仕様だ。
ペイジはこのブラックビューティーにも独自の改造を施していた。3基のピックアップそれぞれにオン/オフのトグルスイッチを追加。つまり、オリジナルのピックアップセレクターに加えて、3つのミニスイッチが増設された状態だ。これにより、「ネック+ブリッジだけオン」「ミドルだけオン」など、通常のレスポールでは不可能な組み合わせが可能になっていた。
しかし、このギターには悲しい運命が待っていた。
1970年、ツアー中に盗難に遭い、そのまま二度と戻ってこなかった。
Led Zeppelinが北米ツアーを回っていた時期の出来事だ。機材と共に忽然と消えたブラックビューティー。ペイジは当然、取り戻すためにあらゆる手を尽くしたが、50年以上経った今でも行方は分かっていない。
50年以上見つかってないって……もう出てこないんすかね?



どこかの屋根裏部屋で眠ってる可能性はゼロじゃない。ただ、仮に出てきたら数億円の価値があるから、持ってる人間が名乗り出られない状況かもしれないな
ロック史に「もしも」はないが、もしこのブラックビューティーが盗まれていなかったら、ツェッペリンのサウンドはまた違ったものになっていたかもしれない。3ピックアップの多彩なトーンが、あの時代の楽曲にどう活かされたのか――想像するだけでギター弾きとしてはゾクゾクする話だ。
そして、この3本のレスポールの物語こそが、後にギブソンがシグネチャーモデルを開発する際の「原点」になっている。次の章では、いよいよ本題のシグネチャーモデル4種を詳しく見ていこう。
ギブソン公式シグネチャーモデル全4種を徹底解説
ここからが本記事の核心部分だ。ギブソンがジミー・ペイジの名を冠してリリースしたレスポールは、1995年から2009年の間に全4モデル存在する。
それぞれコンセプトも仕様も価格帯もまったく異なるから、「ジミー・ペイジモデルが欲しい」と一口に言っても、どれを指しているかで話が全然変わってくる。順番に見ていこう。
【初代】Gibson USA Jimmy Page Les Paul Standard(1995-1999年)
すべてはここから始まった。ジミー・ペイジ初のシグネチャーレスポールは、1995年にGibson USAラインから登場したレギュラー生産モデルだ。
カスタムショップ製ではなく、USAライン。つまり、工場のレギュラーラインで量産されたモデルということだ。これは後の3モデルがすべてカスタムショップ製の限定品であることを考えると、大きな違いになる。
レギュラー生産ということは、比較的手に入りやすかったモデルなんですね?



そうだな。当時の定価で30万円台くらいだったかな。カスタムショップ製と比べたらかなり現実的な価格帯だった。ただし、今は生産終了してるから中古市場で探すしかないぞ
このモデルの最大の特徴は、ペイジのNo.1の「ギミック」を完全再現しようとしたこと。具体的には以下の仕様が盛り込まれている。
- ピックアップ:496R(ネック)/ 500T(ブリッジ)のセラミックマグネット搭載モデル。ヴィンテージPAFの再現ではなく、よりハイパワーな現代的セッティング
- プッシュ/プルポット:4つのノブすべてがプッシュ/プル仕様。コイルタップとフェイズの組み合わせで、約26通りのサウンドバリエーションが得られる
- フィニッシュ:ライト・ハニーバースト。No.1のフェイドしたサンバーストを意識した明るめの色合い
- ハードウェア:ゴールドのハードウェアを採用
- ピックガード:ジミー・ペイジのサイン入り
26通りのサウンドバリエーション――文字で見ると凄そうだろ? 実際、プッシュ/プルを全部引っ張り上げたり戻したりしながら音を切り替えるのは、慣れないとライブ中にパニックになる。俺も似たような仕様のギターを弾いたことがあるけど、「あれ、今どのモードだ?」と迷子になった経験が何度もある。
ただ、この初代モデルには「惜しい」と感じるポイントもある。ピックアップの496R/500Tはセラミックマグネットのハイパワータイプで、ペイジのヴィンテージトーンとはかなり方向性が異なる。どちらかと言えばモダンなハードロック向きのアグレッシブな音だ。「ペイジの音を再現したい」という目的で買うと、ちょっと期待と違うかもしれない。
ペイジのギミック(フェイズ、コイルタップ)を「機能」として再現した意欲作。ただし、ピックアップはヴィンテージ路線ではなくモダン寄り。「ペイジの操作系を体験したい」人には最適だが、「ペイジのトーンを追求したい」人はピックアップ交換を視野に入れる必要があるかもしれない。
【Custom Shop No.1】Gibson Custom Jimmy Page “Number One” Les Paul(2004年)
初代モデルから約5年の沈黙を経て、2004年にリリースされたのが、カスタムショップ製の「ナンバーワン」レスポールだ。こちらは初代とはまったく別次元のモデルと言っていい。
最大のポイントは、ペイジのNo.1を「トーン」まで含めて徹底的に再現しようとしたこと。初代が「機能の再現」だったのに対し、こちらは「音の再現」に重きを置いている。
ピックアップにはこのモデルのために開発されたカスタム・バーストバッカーを搭載。ペイジ本人がギブソンのファクトリーに足を運び、何度も試作品をテストして仕上げたと言われている。ネックプロファイルも、ペイジのNo.1の削られたネックを再現した「エリプティカル(楕円形)」シェイプを採用。一般的な50sプロファイルとも60sプロファイルとも異なる、独特の握り心地だ。
そしてこのモデルが話題になったのは、その限定方式だ。
- Page Played(ペイジ本人が演奏):25本。ペイジ自身が1本ずつ弾き込み、Tom Murphy(トム・マーフィー)によるエイジド加工が施されたもの。COA(証明書)とヴァイオリンの弓が付属
- Murphy Aged:トム・マーフィーによるエイジド加工版
- Custom Authentic:エイジドなしのクリーンな仕上がり
「Page Played」の25本には、なんとヴァイオリンの弓が付属していた。ペイジと言えば、レスポールをヴァイオリンの弓で弾く「ボウイング奏法」でも有名だ。ライブでの「Dazed and Confused」で見せるあのパフォーマンスを再現できるように、というわけだ。
ペイジ本人が弾いたギターが25本だけ!? いくらしたんすか!?



当時でもかなりの高額だったし、今中古で出てきたら……正直、一般人が手を出せる金額じゃないだろうな。弓付きだぞ、弓付き
俺が当時このモデルの発表を雑誌で見た時のことは今でも覚えている。楽器屋の棚に並ぶCustom Authentic版を、ガラス越しに30分くらい眺めてたな。値札を見て、静かにその場を離れた。あの時の俺にはまだサラリーマンの給料しかなくて、「いつか必ず」と心の中で誓ったもんだ。結局買えなかったけどな。
【Black Beauty】Gibson Custom Jimmy Page 1960 Les Paul Custom(2008年)
2008年、ギブソン・カスタムショップは次なるペイジモデルとして、あの盗まれた伝説のギターを蘇らせた。1960年製レスポール・カスタム「ブラックビューティー」の再現だ。
先ほど書いた通り、オリジナルのブラックビューティーは1970年に盗まれて以来、行方不明のまま。つまり、このシグネチャーモデルは「失われたギターを記憶と記録から再現する」という、ロマンの塊のようなプロジェクトだったわけだ。
仕様面での注目ポイントはこちら。
- 3基のピックアップ搭載:レスポール・カスタムの象徴。ネック、ミドル、ブリッジの3ポジション
- 6ウェイ・セレクタースイッチ:通常の3ウェイではなく、6ポジションの切り替えが可能。ペイジがオリジナルに追加した3つのトグルスイッチの機能を、1つのスイッチに集約したような発想だ
- ビグスビー・トレモロ:テールピースにビグスビーのトレモロユニットを搭載。アーム操作でビブラートがかけられる
限定本数は以下の通り。
| バージョン | 本数 | 特徴 |
| Signed(ペイジ署名入り) | 25本 | ペイジ直筆サイン付き |
| Unsigned(署名なし) | 500本 | サインなし |
合計525本。No.1モデルと比べると生産数はやや多いが、それでも世界で500本強しか存在しないギターだ。
ビグスビー搭載のレスポールカスタムという組み合わせは、見た目のインパクトが凄まじい。漆黒のボディにゴールドのビグスビーが乗っている姿は、ギターというより芸術品に近い。弾かずに壁に飾っておきたくなる気持ちも分かるが、それじゃギターが可哀想だ。楽器は弾いてなんぼだからな。
【No.2】Gibson Custom Jimmy Page “Number Two” 1959 Les Paul(2009年)
シグネチャーシリーズの最後を飾ったのが、2009年リリースのNo.2モデル。ペイジのシグネチャーレスポール4部作の掉尾を飾るにふさわしい、最もこだわり抜かれた1本だと俺は思っている。
なぜそう思うのか? まず、ピックアップの仕様を見てくれ。
- ネック:Jimmy Page BurstBucker(アルニコ3マグネット)。甘く柔らかいクリーントーンを狙ったセレクション
- ブリッジ:Number Two Bucker(アルニコ5マグネット、オープンブラックボビン)。No.2の実機に搭載されているピックアップの外観と音色を徹底再現。ボビンが黒いオープンタイプという、視覚的にも特徴的な仕様
ネックにアルニコ3、ブリッジにアルニコ5という非対称なマグネット構成。これにより、ネックポジションでは甘くウォームなトーン、ブリッジポジションではエッジの効いたアグレッシブなトーンが得られる。この「前後で性格が違う」セッティングこそ、ペイジのNo.2の個性そのものだ。
ネックプロファイルは、No.1モデル同様にシェイブドネック(削り込みネック)を採用。ペグにはグローバー102のフェイデッドニッケルが使われていて、No.2実機のくすんだシルバーのグローバーを再現している。こういう細部へのこだわりが、このモデルの本気度を物語っている。
限定本数と価格は以下の通り。
| バージョン | 本数 | 当時の価格 |
| Page Played(ペイジ演奏済み) | 25本 | 約$26,000 |
| Murphy Aged(エイジド加工) | 100本 | 約$16,000 |
| VOS(ヴィンテージ・オリジナル・スペック) | 200本 | 約$12,000 |
合計わずか325本。しかも最上位のPage Playedはたったの25本で、当時の価格が約26,000ドル。日本円にして約260万円(当時のレート)だ。
325本しかないんですね……VOS版でも12,000ドルって、当時でもかなりの高額ですよね



ああ。でもな、今の中古相場を考えると、当時買えた人は結果的に大正解だったわけだ。価値は上がる一方だからな
VOSというのは「Vintage Original Spec」の略で、エイジド加工はせず、新品のきれいな状態で出荷されるバージョンだ。Murphy Agedはトム・マーフィーの手作業によるレリック加工で、何十年も弾き込まれたかのような風合いが再現されている。そしてPage Playedは、ペイジ本人が実際にそのギターを手に取り、弾いたうえで出荷されるという究極のバージョン。
この3段階の構成は、コレクターの心理を完全に理解したマーケティングだと思う。「手が届く範囲で最高のものが欲しい」というギタリストの欲望を、見事に3つの価格帯で受け止めている。上手いよな、ギブソンは。
4つのシグネチャーモデルの中で、最もペイジの「実機の音」に迫ろうとしたモデル。ネック/ブリッジで異なるアルニコマグネット、オープンボビンのブリッジピックアップ、フェイデッドニッケルのグローバーペグなど、細部の再現度は随一。325本という総生産数の少なさが、希少価値をさらに高めている。
全シグネチャーモデル スペック比較一覧
ここまで各モデルを個別に解説してきたが、「並べて比較したい」という人も多いだろう。スペック表を頭に入れてから弾くと、音の違いの”理由”がわかる。これが面白いんだ。
全4モデルの横断比較表を一気に見てくれ。
| 項目 | 初代 USA(1995-99) | CS No.1(2004) | CS Black Beauty(2008) | CS No.2(2009) |
| 再現元の実機 | No.1の操作系を再現 | No.1の音・外観を忠実再現 | 1960年製ブラックビューティー | No.2の音・外観を忠実再現 |
| 製造ライン | Gibson USA | Custom Shop | Custom Shop | Custom Shop |
| ピックアップ | 496R / 500T(セラミック) | カスタム・バーストバッカー | 3基搭載(カスタム仕様) | JP BurstBucker(Alnico 3)/ No.2 Bucker(Alnico 5) |
| サーキットの特徴 | Push/Pull×4で約26通り | Push/Pull(フェイズ切替)+50s配線 | 6WAYセレクタースイッチ | 50sヴィンテージ配線+フェイズ切替 |
| ネック形状 | ペイジ仕様の非対称薄型 | エリプティカル(楕円形) | レスポールカスタム仕様 | シェイブドネック(削り込み) |
| ペグ | グローバー(ゴールド) | グローバー(ゴールド) | ゴールド | グローバー102(フェイデッドニッケル) |
| カラー | ライトハニーバースト | ヴィンテージサンバースト | ブラック | ヴィンテージサンバースト |
| 生産本数 | 数千本(レギュラー生産) | 約150〜200本 | 約525本 | 325本 |
| 当時の定価帯 | 約30〜35万円 | 約100〜180万円 | 約100〜150万円 | 約120〜260万円 |
| 現在の中古相場 | 約35〜60万円前後 | 約200〜400万円前後 | 約150〜300万円前後 | 約200〜500万円前後 |
この表から読み取るべきポイントを整理しよう。
- 「ペイジの多彩なサウンド切替を体験したい」なら初代(1995-99年):26通りのスイッチングシステムは初代だけの特権。コスパも最強
- 「ペイジの実機のトーンに迫りたい」ならCS No.1またはCS No.2:ピックアップ・ネック形状・ハードウェアまで実機を徹底再現
- 「ペイジの”失われた名器”のロマンに触れたい」ならCS Black Beauty:3ピックアップ+6WAYスイッチ+ビグスビーという唯一無二の仕様
- コストパフォーマンスでは初代が圧倒的:中古35〜60万円で「ペイジモデル」のオーナーになれる
ちなみに俺がシグネチャーモデルを初めて手に取ったのは初代だった。あの26通りのスイッチングに夢中になって、半年くらいは毎晩のようにPush/Pullノブをカチカチやっていた記憶がある。正直、実用的に使うのは5〜6パターンだ。だが「あと20パターンもある」という事実が、弾く側にとっての安心感になる。まるで保険みたいなものだな。
「シグネチャーモデルを買えばペイジの音が出る」は本当か?
さあ、ここからが今日の記事の本丸だ。
楽器店で試奏して、「うーん、思ったほどペイジっぽくならないな」と首を傾げた経験、ないか? 俺はある。何度もある。初代シグネチャーを買った日、家に帰って自分のアンプにつないだ瞬間の「……あれ?」という感覚は今でも忘れない。
先に結論を言おう。シグネチャーモデルはペイジの音への”入り口”であって、”到達点”ではない。ギターだけでペイジの音は完成しない。断言する。
ペイジサウンドの核心はMarshall 1959 SLPにある
ジミー・ペイジのサウンドを語るうえで、絶対に避けて通れないのがMarshall 1959 Super Lead Plexi(通称SLP)だ。Led Zeppelinの初期から中期にかけて、ペイジのメインアンプとして君臨し続けたこの100Wの化け物が、あの「ゴリッとしているのに甘い」という矛盾したトーンの正体なんだ。
ペイジはこのアンプをどう使っていたか。
まず、ボリュームはほぼフルに近い状態。100Wの真空管アンプをステージ上でほぼ全開にするわけだから、出力管が自然にクリップして、あのナチュラル・オーバードライブが生まれる。エフェクターで歪ませるのとはまったく別物の、アンプ自体が”鳴いている”歪みだ。弦をピッキングした瞬間の反応速度が全然違う。指先のニュアンスがそのまま音になる感覚――これが真空管アンプの醍醐味であり、ペイジサウンドの根幹だ。
トーン・コントロールの設定も重要なポイントだ。Presenceは控えめ、Trebleはやや高め、Middleはそこそこ、Bassもそこそこ――要するに極端なセッティングをしない。ここがミソで、ペイジはアンプ側のEQをフラットに近い状態にしておいて、ギター側のノブで音をコントロールする手法を多用した。これについては次のセクションで詳しく話す。
え、じゃあ100Wのマーシャルをフルアップしないとダメってこと? 家で弾いたら通報されるんですけど……!



安心しろ。今の時代、選択肢はいくらでもある。モデリングアンプ、パワーアッテネーター、小型チューブアンプ。要は”真空管がナチュラルに歪む状態”を家庭音量で再現できればいいんだ
現代の選択肢を挙げてみよう。
- モデリングアンプ:Kemper、Fractal Audio、Line 6 Helixなど。Marshall 1959のプロファイルを収録しており、ヘッドフォンでも使用可能
- パワーアッテネーター:真空管アンプの出力を落として、フルアップ時の歪みを小音量で得る装置。ToneKing IronmanやFryette Power Stationなどが定番
- 小型チューブアンプ:Marshall Origin 5、DSL1など。5W以下なら自宅でも真空管の自然な歪みを楽しめる
- ペダルでアンプの歪みを再現:Catalinbread Dirty Little Secret、Wampler Plexi-Driveなど、Marshallの歪みをシミュレートするペダルも多い
大事なのは、「ギターそのもの」だけではペイジの音にならないという現実を受け入れることだ。シグネチャーモデルを買って、JC-120(ジャズコーラス)につないでも、あの音は出ない。これだけは断言できる。俺は実際にやって絶望した側の人間だからな。
トーンノブとヴォリュームノブの使い方がペイジの”秘密兵器”
ここで、意外と語られないペイジの最大の武器について話す。
ギター本体のVolume(ボリューム)ノブとTone(トーン)ノブの積極的な活用――これこそがペイジの”秘密兵器”だ。
多くのギタリスト(特に初心者〜中級者)は、ギターのボリュームを10にしたまま弾き続ける。トーンノブに至っては、存在すら忘れている人も多い。実際、俺も最初の10年間はそうだった。恥ずかしい話だが、トーンノブを「飾りだと思っていた」時期すらある。
ペイジは違う。
まずボリュームノブ。ペイジはアンプをフルアップに近い状態にしておき、ギター側のボリュームを絞ることでクリーンサウンドを作る。ボリュームを7くらいまで落とせば、クリーンとクランチの中間にある”透き通った歪み”が生まれる。そこからボリュームを10に上げれば、フルドライブ。つまり、右手のすぐそばにあるノブひとつで、クリーンからフルドライブまでをリアルタイムに行き来しているんだ。
「Stairway to Heaven」を思い出してくれ。前半のアルペジオと後半のギターソロ――あのダイナミクスの変化は、ペダルの踏み替えではなく、ボリュームノブの操作によるところが大きい。指先ひとつで曲の世界観を変えてしまう。これがペイジの凄みだ。
次にトーンノブ。これを絞ると高音域がカットされて、いわゆる”ウーマントーン”と呼ばれる甘く太い音が出る。ペイジは曲中で頻繁にトーンノブを操作し、ブライトなカッティングから太いリードトーンまでを1本のギターで使い分けた。
①アンプを軽く歪む程度にセットする ②ギターのボリュームを5まで下げてクリーンを確認 ③ボリュームを徐々に上げて歪みの変化を体感する ④トーンノブを10→0へゆっくり絞り、音色の変化を耳で追う。この4ステップを15分やるだけで、ギターの表現力が格段に広がるはずだ。
だから俺はいつも言っているんだ。「新しい機材を買う前に、今持っているギターのノブを全部回してみろ」と。ボリュームとトーンの組み合わせだけで、まだ聴いたことのない音が眠っているかもしれない。ペイジが何十年もかけて追求してきたことの第一歩は、機材の購入じゃなく、今あるギターの可能性を知ることなんだ。
目的・予算別|あなたに最適なペイジサウンドへのルート
さて、ここまで読んでくれた人は、もう「ただシグネチャーモデルを買えば完成」とは思っていないだろう。でも逆に、「じゃあ何を買えばいいんだ?」という新たな迷路に入っているかもしれない。
安心してくれ。25年間迷い続けた俺が、目的と予算に合わせたルートを整理した。
「ペイジの音を体験したい」→ まずは初代モデル(1995-99年)を狙え
「ペイジの音がどんなものか、まず体験してみたい」という人。迷わず初代Jimmy Page Signature(1995-99年)の中古を探してくれ。
理由はシンプルだ。
- 生産本数が多いため、中古市場での流通量が4モデル中最も多い
- 中古相場が35〜60万円前後と、シグネチャーモデルの中では最も手が届きやすい
- 26サウンド・スイッチングシステムを搭載しており、ペイジの音の多彩さを最も幅広く体験できる
- Gibson USAラインなのでクオリティも十分高い
中古を探す際の注意点としては、Push/Pullポットのガリ(ノイズ)やスイッチの接触不良をチェックすること。26通りの切替回路を搭載しているぶん、通常のレスポールより接点が多い。製造から25年以上経っている個体がほとんどだから、電装系のメンテナンス履歴を確認できると理想的だ。
「ヴィンテージの忠実再現が欲しい」→ Custom Shop No.1またはNo.2
「ペイジが実際に使っていたあの1959年レスポールの音と手触りを、限りなく本物に近い形で味わいたい」――そういう人にはCustom Shopモデルしかない。
ただし覚悟が要る。中古相場200〜400万円以上。ギターの域を超えて、もはや不動産の頭金レベルだ。しかも生産本数が各モデル約150〜325本と極めて少なく、市場に出ること自体が稀。見つけたら即決する覚悟がないと手に入らない世界だ。
No.1とNo.2のどちらを選ぶかは、好みの問題になる。No.1はペイジのメインギターそのものの再現で、ZeppelinのアルバムI〜IV期のサウンドに最も近い。No.2はフロントとリアで異なるアルニコマグネットを搭載しており、前後のピックアップで別人格のトーンが楽しめる。どちらを選んでも後悔はしないだろう。後悔するとしたら、財布の中身だけだ。
「予算を抑えてペイジサウンドに近づきたい」→ 代替ルートという選択肢
ここからが、実は最も多くの人に関係ある話だ。
「シグネチャーモデルには手が出ないけど、ペイジの音に近づきたい」。その気持ち、痛いほどわかる。俺もサラリーマン時代、毎月のローンを抱えながら「どうにかして安くペイジの音を出す方法はないか」と考え続けていた。
結論から言おう。代替ルートでペイジサウンドの80%は再現できる。残りの20%は、ヴィンテージ材の響きやプレイヤーの個性だから、どんな機材を使っても埋まらない。逆に言えば、80%まではテクニックと工夫で到達可能なんだ。
具体的な代替ルートを紹介する。
- Gibson Les Paul Standard ’50s(現行品)+ペイジ配線カスタム:現行レスポールにコイルスプリット+位相切替のPush/Pull配線を施工してもらう。ショップへの依頼で工賃込み3〜5万円程度。ギター本体約25万円+工賃で、30万円台でペイジ仕様のレスポールが手に入る
- Epiphone Les Paul Standard+配線カスタム:Epiphone(約5〜8万円)をベースに配線カスタム。トータル10万円台前半でペイジ的なスイッチングシステムが構築可能。ピックアップをBurstBuckerに載せ替えればさらに本格的になる
- Edwards E-LP-112LTS/RE:ESPのミドルクラスブランドEdwardsが出していたレスポールタイプ。国産で品質が高く、中古5〜8万円程度で入手可能。コストパフォーマンスは全選択肢中トップクラス
- Tokai LS-JIMMY:東海楽器のペイジ風モデル。Tokaiのレスポールタイプは「ジャパンヴィンテージ」として海外でも評価が高く、木材の鳴りが良い個体が多い。中古市場で5〜15万円程度
え、Epiphoneでもいけるんですか!? てっきりGibsonじゃないとダメなのかと……



いい質問だ。正直に言うと、ブラインドテストで聴き分けられる人はプロでも少ないぞ。特に配線カスタム+マーシャル系アンプを通した音は、もう「レスポールの音」として十分成立する。大事なのはブランドロゴじゃなくて、回路と木材とアンプの組み合わせだ
つまりこういうことだ。シグネチャーモデルがなくても、配線+アンプ+ノブの使い方を押さえれば、ペイジサウンドの核心には確実にたどり着ける。死ぬほど遠回りしてきた俺が言うんだから、間違いない。遠回りしたからこそわかるんだ。最短ルートというものが。
よくある質問(FAQ)
ペイジのシグネチャーモデルについて、よく寄せられる質問をまとめた。
- ジミー・ペイジのシグネチャーモデルはまだ新品で買えますか?
-
残念ながら、すべてのモデルが生産完了している。初代(1995-99年)、Custom Shop No.1、Black Beauty、No.2のいずれも現在は中古市場でしか入手できない。デジマートや大手楽器チェーンの中古コーナーを定期的にチェックするのがベストだ。
- 26通りのサウンド・スイッチングは実際に全部使いますか?
-
正直に言えば、実用的に使うのは5〜6パターンだ。通常のフロント、リア、ミックスに加えて、コイルスプリットのシングルサウンドが2〜3種類――これだけで日常の演奏はほぼカバーできる。ただし、レコーディング時に「この曲にはあのパターンがハマる」という場面は意外とあるし、残り20パターンの”引き出し”があるという安心感そのものが、このギターの魅力だ。
- Custom Shop No.1とNo.2、どちらを買うべき?
-
目的次第だ。No.1はペイジのメインギターの再現で、Led Zeppelin初期〜中期のストレートなロックサウンドが欲しい人向け。No.2はフロントとリアで異なるマグネットを搭載しており、より幅広いトーンバリエーションが楽しめる。「どちらか一本だけ」と言われたら、汎用性の高いNo.1を俺は勧める。ただし両方とも中古200万円超なので、”どちらか迷う”というのは贅沢な悩みだということは付け加えておく。
- ペイジサウンドを出すための最低限の機材構成は?
-
ハムバッカー搭載のレスポールタイプ+マーシャル系アンプ。この2つが最低限の構成だ。レスポールタイプはGibsonでなくてもいい。EpiphoneでもEdwardsでもTokaiでも、ハムバッカーが載っていてレスポール型のボディ構造を持っていれば、基本的な「箱の鳴り」は近くなる。アンプはMarshall DSLシリーズやOriginシリーズが入手しやすく、実売5〜10万円程度。モデリングアンプでもMarshall 1959のプロファイルがあれば十分対応できる。
- EdwardsやTokaiのペイジ風モデルは買う価値ありますか?
-
大いにある。特にEdwards E-LP-112LTS/REは、国産ならではの精度の高いフレット処理とネックの仕上げが光る。中古5〜8万円で手に入ることを考えると、コストパフォーマンスは驚異的だ。ピックアップを好みのものに載せ替え、配線をペイジ仕様にカスタムすれば、シグネチャーモデルに迫るサウンドが得られる可能性は十分ある。Tokaiも木材の鳴りに定評があり、特に80〜90年代の個体は「ジャパンヴィンテージ」として海外コレクターからの評価も高い。
まとめ――自分だけのZepサウンドへの第一歩を踏み出せ


長い記事にここまで付き合ってくれて、ありがとう。
最後に、今日の話を振り返っておこう。
- ジミー・ペイジのシグネチャーモデルは初代(1995-99年)、Custom Shop No.1(2004年)、Black Beauty(2008年)、No.2(2009年)の4種類が存在する
- 各モデルはペイジの異なるギター・異なる時代を再現しており、目的によって選ぶべきモデルが変わる
- すべて生産完了だが、初代モデル(1995-99年)が最も流通量が多く、中古相場も最もリーズナブル
- シグネチャーモデルは必須ではない。現行レスポール+配線カスタムでペイジ仕様は構築できる
- ギターだけではペイジの音は完成しない。アンプ(Marshall系)+トーンコントロール+ボリュームノブの使い方が不可欠
- 予算と目的に合ったルートを選ぶことが、最も確実にペイジサウンドへ近づく方法
俺はギターを始めて25年、死ぬほど遠回りした。高い機材を買っては「思った音と違う」と落胆し、次の機材に手を出す。その繰り返しだった。でもある時気づいたんだ。ペイジの音を追いかけること自体が、自分の音を見つける旅だったということに。
ペイジだって、最初から”あの音”を出せたわけじゃない。ヤードバーズ時代からLed Zeppelin IVに至るまで、何年もかけてあのサウンドを作り上げた。その過程には、無数の試行錯誤と失敗がある。
だから、今この記事を読んでいるあなたが「どのモデルを買えばいいかわからない」と悩んでいるなら、それは正常な状態だ。悩んでいるということは、真剣にペイジの音を追いかけているということだ。
シグネチャーモデルを買うもよし。現行レスポールにカスタム配線を施すもよし。Epiphoneから始めるもよし。大事なのは、最初の一歩を踏み出すことだ。



ギターは逃げない。逃げるのはいつも自分の指だ。今日、家に帰ったら、まずギターのボリュームノブとトーンノブを全部回してみろ。まだ聴いたことのない音がそこにあるかもしれない。それが、あなただけのZepサウンドへの第一歩だ
