「憧れだけで、30万円のギターを買っていいんだろうか」。
ジェフ・ベックモデルのストラトキャスターを検索したあなたは、いまそう迷っていませんか。10年前の私がまさにそうでした。
申し遅れました、KOTOBUKIです。中学から約40年ギターを弾いてきて、所有ギターは16本。そのうちの1本が、2016年に中古で買ったFender Jeff Beck Stratocaster(2013年製)です。
先に結論を言うと、このギターは「買い」です。ただし、『Fender Jeff Beck Stratocaster』は発売から30年以上の間に仕様が一度大きく変わっているため、年代選びを間違えると「思っていた音と違う」と後悔することになります。
この記事では、1991年の発売から現在までの仕様の変遷を年代別に整理したうえで、10年弾き続けた実感——太いネックの真実、クラプトンモデルとの弾き比べ、中古選びのチェックポイント——まで、買う前に知りたいことを全部まとめました。
買った5日後に撮った試奏動画も載せています。実際の音を聴きながら読み進めてください。
結論:ジェフベック ストラトは「買い」か?10年所有者の総合評価
結論から言います。ジェフ・ベックモデルのストラトキャスターは「買い」です。私は2016年に中古で手に入れてから10年弾いてきましたが、手放そうと考えたことは一度もありません。
理由はシンプルです。このギターは「見た目だけのアーティストモデル」ではなく、実戦のために設計された道具だからです。アームを派手に使ってもチューニングがほとんど狂わない。ノイズに悩まされない。ハイポジションまでストレスなく指が届く。ジェフ・ベック本人がステージで磨き続けた仕様が、そのまま市販モデルに落とし込まれています。
ただし、誰にでも無条件におすすめできるわけではありません。ネックは明らかに太めで、好みが分かれます(実感は後述の「ネックは本当に太い?」で正直に書きます)。さらに、1991年の発売から現在までに仕様が一度大きく変わっているため、どの年代を選ぶかで性格の違う楽器になります。
- アームを多用する。チューニングの安定性を最優先したい
- ノイズの少ない実戦的なストラトが欲しい
- ジェフ・ベックの機材とその背景ごと楽しみたい
- 細めのネックが好きな人には向かないかもしれない
- ヴィンテージ系の枯れたストラトサウンドを求める人も要検討
現行モデルの基本スペックを整理しておきます。
| 項目 | 仕様 |
|---|---|
| ボディ | アルダー |
| ネック | メイプル・Cシェイプ(太め) |
| 指板 | ローズウッド・22フレット |
| ピックアップ | Fender Hot Noiseless×3(5wayスイッチ) |
| ナット | LSRローラーナット |
| ペグ | ロック式 |
| ブリッジ | 2点支持シンクロナイズドトレモロ |
| カラー | オリンピックホワイト/サーフグリーン |
| 新品価格 | サーフグリーン 298,000円・オリンピックホワイト 328,000円(2026年7月時点・サウンドハウス) |
この表からわかるのは、ローラーナット・ロックペグ・ノイズレスPUという「チューニングとノイズの悩みを消す装備」が最初から全部載っているということです。あとから改造で足すと数万円かかる装備が標準です。
とはいえ新品で約30万円。衝動買いできる金額ではありません。だからこそ、次の章からの仕様遍歴と実機レビューを読んで、自分に合う1本かどうかを見極めてから決めてください。
海外のギターショップによるこのレビュー動画でも、評価の中心は「実戦仕様の完成度」でした。私の10年の実感と重なるのは、クリーントーンの艶とアーム使用時の安定性です。逆に、動画があまり触れていない「太いネックに慣れるまでの時間」については、後半の章で私の体験をそのまま書きます。
ジェフベックモデルの誕生と最初期の仕様【1991年・レースセンサー期】
いまでこそ「ジェフ・ベックといえば白いストラト」ですが、市販のシグネチャーモデルが生まれるまでには長い前史があります。ここを知っておくと、なぜこのモデルがこういう仕様なのかが腑に落ちます。
誕生のきっかけ:イエロー・ストラトから「リトル・リチャード」へ
きっかけは1本の黄色いストラトでした。ピックアップの巨匠セイモア・ダンカンが組み上げた通称「イエロー・ストラト」です。1986年の軽井沢公演あたりで登場し、1989年の『Guitar Shop』の頃には、22フレット・ローラーナット・2点支持ブリッジという仕様に育っていました。アームを多用するジェフのために整えられたこの装備が、後のシグネチャーモデルの土台になります。
そして1989年、サンタナとのツアーあたりから、ジェフはサーフグリーンのストラトを愛用しはじめます。本人が「リトル・リチャード」と呼んだこのギターこそ、市販モデルの直接の原型です。レースセンサー・ピックアップ、ウィルキンソン製のローラーナット、シュパーゼル製のロックペグ——現在のモデルにも受け継がれる要素が、この時点で出そろっていました。
こうした本人使用機をベースに、フェンダーが市販モデルとして送り出したのが1991年。ジェフ・ベック・シグネチャー・ストラトキャスターの誕生です。
最初期モデル(1991〜2001)の仕様
最初期のモデルは、フェンダーの「Strat Plus」をベースにしていました。最大の特徴は、いま市販されているものとはピックアップがまったく違うことです。
初期に積まれていたのは、レースセンサー・ゴールドというノイズの少ないピックアップ。しかも配置が独特で、ネックとミドルに1基ずつ、そしてブリッジには2基がセットされていました。プッシュボタンを押すと、そのブリッジの2基目が加わって、より太い音に切り替わる仕組みです。ハムバッカーを1つ載せるのとは違う、レースセンサーならではの発想でした。
カラーは、サーフグリーン、ミッドナイトパープル、ヴィンテージホワイトの3色。特にサーフグリーンは、本人機「リトル・リチャード」の面影を宿す色として人気を集めました。
- ベースは Strat Plus
- ピックアップはレースセンサー・ゴールド×4(ブリッジ2基+プッシュスイッチで太い音)
- ローラーナット+ロックペグは当初から標準
- カラーはサーフグリーン/ミッドナイトパープル/ヴィンテージホワイト
ここで頭に入れておいてほしいのは、「レースセンサー期=1991〜2001年」という区切りです。この10年ものと、それ以降のモデルは、音の出発点になるピックアップからして別物です。中古で選ぶときの最初の分かれ道になるので、次の章で年代別の違いをはっきりさせておきます。
年代別の仕様変遷:2001年の大改訂で何が変わったか【早見表つき】
ジェフ・ベックモデルを語るうえで、いちばん大事な分岐点が2001年です。ここで一度、大きく仕様が変わりました。中古を検討している人にとっては、この一線を知っているかどうかで買い物の成否が変わると言ってもいいくらいです。
2001年の大改訂:ピックアップとヒールの2点
変わったのは、大きく2つです。
1つ目はピックアップ。2001年を境に、初期のレースセンサー・ゴールドから、フェンダーのHot Noiseless(ホット・ノイズレス)へと切り替わりました。デュアルコイル構造のセラミック・ピックアップで、シングルコイルの音を残しながらノイズを抑え、出力にも余裕があります。配置もシンプルになり、3基+5wayスイッチという、いわゆる普通のストラトの操作系に近づきました。私が持っている2013年製も、このHot Noiselessを積んだ世代です。
2つ目はヒール(ネックとボディの接合部)。ここに「コンター」と呼ばれる削り込みが加わり、ハイフレットを弾くときに左手が引っかかりにくくなりました。地味な変更に見えますが、ソロで高い音域へ駆け上がるジェフ・ベックのスタイルを考えると、理にかなったアップデートです。
逆に言えば、変わったのはこの2点が中心です。ローラーナット、ロックペグ、22フレット、2点支持ブリッジといった屋台骨は、1991年からほとんど手が入っていません。それだけ最初から完成度が高かったということです。
年代別 仕様早見表
言葉だけだと分かりにくいので、年代別に整理します。中古を見るときは、この表を思い出してください。
| 年代 | ピックアップ | ヒール | ナット | カラー | 中古で見るポイント |
|---|---|---|---|---|---|
| 第1期 1991〜2001 | レースセンサー・ゴールド×4(ブリッジ2基+プッシュスイッチ) | コンターなし | ウィルキンソン系ローラーナット | サーフグリーン/ミッドナイトパープル/ヴィンテージホワイト | ブリッジのプッシュスイッチの有無 |
| 第2期 2001〜現行 | Fender Hot Noiseless×3(5way) | コンターあり | LSRローラーナット | オリンピックホワイト/サーフグリーン | ヒールの削り込み |
| カスタムショップ 2004〜 | Hot Noiseless系(本人仕様に準拠) | コンターあり | LSRローラーナット | オリンピックホワイト/サーフグリーン | マスタービルダーの刻印・価格帯 |
この表からわかる、いちばん実用的なポイントはこれです。中古のジェフ・ベックモデルを見つけたら、まず「ブリッジにプッシュスイッチがあるか」「ヒールが削られているか」を確認すれば、年代の見当がつきます。写真だけで第1期か第2期かを判断できるので、ネットで探すときにも効きます。
どちらが良い・悪いではありません。ノイズレスならではの現代的な扱いやすさを取るか、レースセンサー期の個性を取るか。好みの問題です。
KOTOBUKIレースセンサー期と現行、結局どっちがいいの?



音の個性で選ぶなら初期、扱いやすさとノイズの少なさなら現行。私は現行寄りの2013年製を選んだんだけど、それには弾いてみて納得した理由があってね。
私が第2期を選んだ理由は、実際に弾いた話とあわせて、このあとのレビューで書きます。
この動画は、現行モデルの仕様を楽器店の店員さんが日本語で解説してくれています。私の文章とあわせて、現行機の実物がどう動くのかを確かめてみてください。
レギュラーラインとカスタムショップの違い:本人仕様は何が特別か
ジェフ・ベックモデルには、通常のレギュラーライン(USA製)とは別に、フェンダー・カスタムショップ製のモデルがあります。値段は数倍。ここでは、その違いを整理しておきます。
先に正直に言っておくと、カスタムショップ製は私自身の所有・試奏経験がありません。ですから、この章は公式情報や専門誌の記事、店頭で触れた範囲をもとにした説明で、私の個人的な評価というより「調べてわかったこと」として読んでください。
レギュラーラインは、先ほどから説明している約30万円前後のモデルです。工場でていねいに量産され、Hot Noiselessピックアップやローラーナットといったジェフ・ベック仕様をひととおり備えています。「まず1本、本人仕様を実戦で使いたい」なら、こちらで十分すぎるほどです。
一方カスタムショップは、フェンダーの中でも選ばれたマスタービルダーが手がける少量生産のライン。2004年から展開されています。ギター・マガジンWEBの記事では、マスタービルダーのトッド・クラウスが「ジェフ・ベック本人と同じ仕様で製作している」と語った、本人使用機に限りなく近い1本が紹介されていました。木材の選定、塗装の質感、細部の作り込み——量産ラインとは異なる次元でのこだわりが価格に表れています。
| 項目 | レギュラーライン(USA) | カスタムショップ |
|---|---|---|
| 価格帯 | 約30万円前後 | 数十万〜(個体により大きく変動) |
| 生産 | 工場での量産 | マスタービルダーの少量生産 |
| 位置づけ | 本人仕様を実戦で使う定番 | 本人使用機に迫るこだわりの1本 |
| 向く人 | 現実的な予算で本物が欲しい人 | コレクション性・究極の作り込みを求める人 |
なお、ジェフ・ベック本人も、フェンダー・カスタムショップのマスタービルダー、J.W.ブラックが手がけた白いストラトを、90年代末から2000年代のメインギターとして愛用していました。つまり「本人使用機の系譜」という意味では、カスタムショップは特別な位置にあります。
とはいえ、音を出して楽しむための道具として考えるなら、レギュラーラインの完成度で不満が出ることはまずありません。予算に糸目をつけないコレクター的な楽しみ方をするのでなければ、レギュラーラインを軸に考えて大丈夫です——これは10年レギュラー機を弾いてきた私の実感でもあります。
カスタムショップ製の音は、この海外ショップのデモ動画で確かめられます。私が言葉で説明するより、実際の鳴りを聴いてもらうのがいちばんです。
10年弾いてわかった音と弾き心地【2016年に中古購入】
ここからは、カタログには載っていない話です。
2016年6月、私は東京・お茶の水のギタープラネットで、1本の中古のジェフ・ベックモデルと出会いました。2013年製、第2期のHot Noiseless世代です。中古とはいえ状態のいい個体で、値札を見ながらしばらく弾かせてもらい、その日のうちに連れて帰りました。憧れのモデルを自分のものにする——ケースを抱えて御茶ノ水の坂を下りたときの、あの少しふわふわした感覚はいまでも覚えています。
家に帰って最初に鳴らしたときの音は、5日後に動画に残しました。
アンプはYAMAHAのTHR10。クリーントーンに、ディレイとリバーブを軽くかけただけの素の音です。派手なエフェクトはかけていません。それでも、ノイズレスピックアップの澄んだ響きと、弾いた音がスッと前に出てくる感じは伝わると思います。買ったばかりで、まだ手に馴染んでいない状態の音——これが私とこのギターの10年のスタートでした。
では、10年弾いてどうだったか。いちばん実感が強いのは、チューニングの安定感です。
ジェフ・ベックのプレイに憧れる人は、まず間違いなくアーム(トレモロ)を使いたくなります。私もそうでした。ぐいっとアームを下げて、また戻す。普通のストラトなら、これを繰り返すうちにチューニングがじわじわ狂っていきます。ところがこのギターは、ローラーナットとロックペグのおかげで、アームを派手に使ってもピッチがほとんど元に戻る。「これがジェフの安心感か」と、弾きながら何度も思いました。ステージやセッションで、曲の途中にチューニングを気にしなくていいというのは、想像以上に大きな武器です。
音の面では、Hot Noiselessの素直さが気に入っています。シングルコイル特有のジャキっとした成分を残しながら、あの「ジー」というノイズがほぼ出ない。自宅で録音するときにも、アンプのゲインを上げてもノイズに邪魔されないのは本当に助かります。枯れたヴィンテージトーンとは方向性が違いますが、これは「これから鳴らして育てる、現代の実戦機」だと割り切れば、むしろ長所です。



試奏で一番グッときた瞬間は?



アームを思いきり使ったのにチューニングがピタッと戻ったとき。「あ、これは一生付き合えるやつだ」と直感したよ。
もちろん、10年のあいだにずっと機嫌よく弾けたわけではありません。最初にどうしても越えなければならない壁がありました。ネックです。この話は、検索している人がいちばん気にしているところなので、章を分けて正直に書きます。
ジェフベックモデルのネックは本当に太い?所有者の実感で答える
「ジェフベック ストラト ネック 太い」——この記事にたどり着いた人の多くが、このことを気にして検索しているはずです。だから、遠慮なく正直に答えます。
太いです。少なくとも私の2013年製は、握った瞬間に「おっ、しっかりあるな」と感じました。
フェンダーの公称ではネックは「Cシェイプ」。スペック上は極端な太さではなく、資料によると1フレット付近で約20.8mm、12フレット付近で約23.4mmとされています。数字だけ見れば「特別太い」とは言い切れません。それでも、細めのモダンなネックに慣れた手には、明らかに肉厚に感じられます。感じ方には個人差がある、というのが正確なところです。
正直に打ち明けると、私も最初の数週間は違和感がありました。それまで弾いていたギターより一回り太く感じて、「これは失敗したかな」と一瞬よぎったほどです。
ところが、です。
弾き込むうちに、その太さが気にならなくなってきました。それどころか、今では太いネックのほうが好きになっています。しっかりした握りは、手のひら全体でネックを支えられる安定感につながります。長時間弾いても左手が疲れにくいし、チョーキングやビブラートで音程が安定する。慣れてしまえば、太さは弱点ではなく「弾きやすさ」に変わりました。これは、10年弾いてきたからこそ言える実感です。
とはいえ、これは私の手と好みの話です。誰にでも「慣れれば大丈夫」と保証はできません。
- 手が小さい人・細ネックに強いこだわりがある人は、購入前に必ず試奏を
- 最初の違和感だけで判断しない。数週間弾いて手が馴染むかどうかが分かれ目
- 逆に、安定感やチョーキングのしやすさを重視するなら、この太さはむしろ武器になる
もし近くの楽器店に置いてあれば、5分でいいので握ってみてください。それでも判断がつかないなら、「最初は太く感じるが、慣れると安定感になる」という私の10年をひとつの参考にしてもらえればと思います。
クラプトンモデルと弾き比べ:ネック・弦・配線はここまで違う
私の手元には、ジェフ・ベックモデルと並んで、エリック・クラプトンモデルのストラトもあります。3大ギタリストのうち2人のシグネチャーを、同じ部屋で弾き比べられる——これはファンとして役得としか言いようがありません。そして実際に並べて弾くと、同じ「ストラト」でも別物だとよくわかります。
まず、この2人の関係を象徴するような、こんな声を紹介させてください。
Crossroads Guitar Festivalでのクラプトンとベックの共演について、「クラプトンもカッコ良いけど、ジェフベックの凄さに圧倒される」という投稿です。ミディアムバラードの演奏でこそ本当の上手さがわかる、という指摘には私も深くうなずきました。本人同士がこうして並び立ってきた2人ですが、そのシグネチャーモデルもまた、まったく性格が違います。
いちばん驚くのはネックです。ジェフ・ベックモデルが太めのCシェイプなのに対し、クラプトンモデルは細い「ソフトV」シェイプ。手のひらに三角形の稜線が当たる独特の握り心地で、ベックモデルとは真逆の細さです。持ち替えると、同じメーカーの同じストラトとは思えないほど左手の感覚が変わります。
弦のゲージも私は変えています。ベックモデルには10〜のセットを張って、太い音と弾きごたえを楽しむ。クラプトンモデルには09〜の細めを張って、軽やかなフィンガリングとチョーキングのしなやかさを活かす。ネックの性格に合わせて、弦まで変えているわけです。
そして最大の違いが、音を作る回路です。
| 項目 | ジェフ・ベックモデル | エリック・クラプトンモデル |
|---|---|---|
| ネック | 太めのCシェイプ | 細いソフトVシェイプ |
| 弦(私の場合) | 10〜 | 09〜 |
| ピックアップ | Hot Noiseless×3 | Vintage Noiseless×3 |
| 回路 | パッシブ(5way) | アクティブ・ミッドブースト(最大25dB)+TBX |
| トレモロ | 2点支持で稼働(アーム多用向け) | ブロック(固定)でアームは使わない前提 |
| 音の方向性 | 澄んで前に出る実戦トーン | 図太くブーストできる粘りのトーン |



同じストラトなのに、そんなに違うもの?



全然違う。ベックは「アームで歌わせる」ための道具、クラプトンは「回路で音を作り込む」ための道具。目指す音楽が違うんだよね。
この表からわかるのは、2本が「向かう音楽の方向」からして別設計だということです。アームを駆使して音を歌わせたいならジェフ・ベックモデル。ミッドブーストで図太いリードトーンを作り込みたいならクラプトンモデル。どちらが上ということではなく、やりたいことで選ぶギターです。
3大ギタリストそれぞれの機材と個性については、別の記事でも詳しくまとめています。あわせて読むと、なぜこの2本がここまで違うのかがより立体的に見えてきます。
3大ギタリスト完全ガイド|クラプトン・ベック・ペイジ奏法や曲・機材の違い
どのジェフベック ストラトを買うべきか:年代・ライン別の選び方
ここまで読んでくれたあなたは、もう「ジェフ・ベックモデルは1種類ではない」ことを理解しているはずです。最後は、どれを選べばいいのかを、タイプ別に整理します。
選択肢は大きく3つ。第1期(レースセンサー期・中古)、第2期/現行(Hot Noiseless)、カスタムショップです。どれを選ぶかは、あなたが何を大事にするかで決まります。
| こんな人 | おすすめ | 理由 |
|---|---|---|
| とにかく本人仕様を実戦で使いたい・予算は現実的に | 現行(新品) | 完成された第2期仕様が新品保証つきで手に入る。約30万円 |
| 独特の音の個性・レースセンサーの太い切り替えを楽しみたい | 第1期(中古) | 現行にはない4ピックアップ&プッシュスイッチ。ただし程度の見極めが必要 |
| 扱いやすさとノイズの少なさを最優先 | 第2期/現行 | ノイズレス+5wayで現代的に扱いやすい。私もこのタイプ |
| 究極の作り込み・コレクション性を求める | カスタムショップ | マスタービルダー製。本人使用機に迫る1本 |
私自身の結論を言えば、「まず1本、ジェフ・ベックの世界を体験したい」という人には、現行モデルの新品を強くおすすめします。理由は3つあります。第一に、いちばん完成された第2期仕様であること。第二に、新品なら保証があり、ネックの状態やトレモロの調整といった中古特有の不安がないこと。第三に、店頭で試奏して自分の手に合うか確かめてから買えることです。
一方で、「人と同じは嫌だ」「レースセンサー期のあの独特な音が欲しい」という人は、迷わず第1期の中古を探す価値があります。ただし中古選びには固有の注意点があるので、次の章でチェックポイントをまとめます。
買う前に、ぜひこのデモ動画で音を確かめてください。クリーン、歪み、リードと、チャンネルごとの音がていねいに収録されているので、「自分の弾きたい音が出せそうか」を判断する材料になります。
現行モデルの価格や在庫は、時期やカラーによって変わります。狙っているカラーがある人は、まず今の実売価格をチェックしておきましょう。
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中古で買うなら:相場と失敗しないチェックポイント【購入体験談】
ジェフ・ベックモデルは、中古市場にもそれなりの数が出回っています。私自身、2016年に中古で手に入れた身なので、中古で狙う人の気持ちはよくわかります。ただし、値段だけで飛びつくと後悔します。ここでは、実際に中古を買った経験から、見るべきポイントをまとめます。
まず相場を知る
レギュラーラインの中古は、状態や年代によって幅がありますが、ひとつの目安になります。ヤフオク!の落札データを見ると、過去のレギュラーモデルの落札価格はおおむね6万〜33万円、平均で16万円前後でした。新品が30万円前後であることを考えると、状態のいい中古はかなり魅力的な選択肢です。
一方、カスタムショップ製、とくにトッド・クラウスら著名ビルダーの手による個体は、中古でも70万〜100万円超が普通です。同じ「ジェフ・ベックモデル」でも、レギュラーとカスタムショップでは価格の桁が変わることは頭に入れておいてください。
年代を見分ける(写真でできる)
中古を探すとき、まず確認したいのが年代です。年代別早見表でも触れましたが、写真だけで見分けるコツがあります。
- ブリッジ寄りにプッシュスイッチがある → 第1期(1991〜2001・レースセンサー)
- ネックとボディの接合部(ヒール)が削られている → 第2期(2001〜・Hot Noiseless)
- ヘッド裏やネックプレートのシリアルナンバーで製造年を確認
出品写真にブリッジ周りとヒールが写っていれば、店に問い合わせる前に自分でおおよその年代を判断できます。
試奏で必ず確かめたい一点
そのうえで、可能なら試奏をおすすめします。とくにこのモデルで確認してほしいのが、ローラーナットの状態です。



中古で一番怖いのは何?



ローラーナット周りの状態だね。特殊なパーツだから、摩耗やガタがあると交換が面倒。ここだけは試奏で必ず確かめてほしい。
ローラーナットは、このギターのチューニング安定性を支える心臓部です。構造が特殊なぶん、交換部品も一般的なナットほど簡単ではありません。アームを何度か使ってみて、チューニングがちゃんと戻るか、弦の通り道に引っかかりやガタがないかを確認しましょう。私が2016年にお茶の水のギタープラネットで選んだときも、この点を店員さんと一緒にチェックして、納得してから決めました。
できれば正規ルートで
もう一点、これは自戒も込めてですが、できるだけ楽器店や認定中古など、正規のルートで買うことをおすすめします。個人間のオークションは安く手に入る反面、パーツ交換や改造が申告されていないケース、状態説明があいまいなケースがあります。ジェフ・ベックモデルは仕様の見極めが特に大事なモデルなので、多少高くても、プロが検品した個体のほうが結果的に安心です。
狙っている年代やカラーがある人は、まず中古の在庫と価格をチェックしてみてください。タイミングによっては、状態のいい掘り出し物に出会えます。
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ジェフ・ベック本人のストラト遍歴:鑑定団に出た実機の話も
市販モデルの話が続きましたが、そもそもジェフ・ベック本人は、どんなストラトを弾いてきたのか。ここを知っておくと、シグネチャーモデルへの愛着がぐっと深まります。ファン目線で、駆け足で追ってみましょう。
まず「全てを兼ね備えたギターヒーロー」という、こんな言葉から。
テクニック、音、姿、ライブ、スタジオ——その全部がトップレベルのギタリストは数えるほどしかいない、ジェフ・ベックは間違いなくその1人だ、という投稿です。「ギターにおいてはダメなところが一つもない」という一文には、私も完全に同意します。そのジェフが、生涯をかけて相棒に選んだのがストラトでした。
ストラトに行き着くまで
意外なことに、ジェフは最初からストラト一筋だったわけではありません。名盤『Blow by Blow』の頃にレスポールから本格的に持ち替えたのですが、その理由を本人は「ストラトのほうがずっとワイルドなギターだ」「軽いし、レスポールより魅力的な楽器だ」と語っています。ジミ・ヘンドリックスの衝撃も大きく、「ジミヘンを経て以来、ストラトにこだわりたいと思った」とも。こうして「ストラトキャスターが俺の楽器なんだ」と確信していったわけです。
70年代:白いストラトと“フランケン”
70年代のジェフは、主に3本の白いストラトを使い分けていました。そしてこの時期を象徴するのが、通称「フランケン・ストラト」。57〜58年製のボディに、71年以降のネックを強引に組み合わせ、あちこちの年代のパーツを寄せ集めた“つぎ接ぎ”の1本です。さらに78年には、シェクター製の複雑な回路(3つのミニスイッチで多彩な音を切り替える変態的な仕様)を積んだ白ストラトも登場します。この探究心の塊のような姿勢が、いかにもジェフらしいところです。
80〜90年代:シグネチャーへの道
80年代に入ると、セイモア・ダンカンが組んだ「イエロー・ストラト」が登場し、22フレット・ローラーナット・2点支持ブリッジという、のちのシグネチャーの原型が固まっていきます。そして本人が「リトル・リチャード」と呼んだサーフグリーン、さらにカスタムショップのJ.W.ブラックが手がけた白いストラトへと続き、市販モデルの仕様が確立していきました。この記事の前半で触れた市販モデルの成り立ちは、まさにこの本人使用機の歴史そのものなのです。
鑑定団に出た実機
ちなみに2025年12月2日放送の「開運!なんでも鑑定団」では、ジェフ・ベックが1975年当時に使用していた実機のストラトキャスターが登場し、話題になりました。ボディの擦れ具合に、彼独特の弾き方の痕跡が残っていたそうです。本人が実際に握ったギターには、市販モデルとはまた別の、歴史そのものの価値があります。
最後に、その姿を動画で。
これは2022年、ジェフ・ベック最後のフルステージの記録です。最晩年まで、彼は白いストラトを歌わせ続けました。私たちが手にするシグネチャーモデルは、この音への憧れそのものなのだと、あらためて感じさせてくれます。
ジェフ・ベックの人物像や凄さについては、別記事でも掘り下げています。あわせてどうぞ。
【保存版】ジェフ・ベックの「凄さ」を完全解剖
ジェフ・ベックのアームテクニック徹底解説
ジェフベック ストラトのよくある質問
最後に、検索でよく見かける細かい疑問に、まとめてお答えします。
Q1. 配線やミニスイッチの改造はできる?
市販のジェフ・ベックモデルは、パッシブの5wayという素直な配線なので、一般的なストラトと同じ感覚で改造やパーツ交換は可能です。ただし正直に言うと、私自身はこのギターの配線を改造したことはありません。ノーマルの状態で完成されていると感じているからです。なお、本人使用機に積まれていたシェクター製の「3ミニスイッチの変態的な回路」は市販モデルとは別物で、あれは特殊なオーダー品です。
Q2. 弦のゲージは何を張ればいい?
決まりはありませんが、私はこのギターに10〜のセットを張っています。太めのネックと相まって、しっかりした音と弾きごたえが出ます。ジェフ・ベック本人も比較的しっかりしたゲージを好んだと言われています。まずは10〜で始めて、指がきついと感じたら09〜に下げる、くらいの気持ちで大丈夫です。
Q3. ジェフ・ベックの音に近づくセッティングは?
ピックだけでなく、指(フィンガー)で弾くこと、そしてアームとボリューム奏法を積極的に使うことが、あの“歌う”トーンへの近道です。機材よりも奏法の比重が大きいのがジェフ・ベックの世界です。具体的なアームテクニックは、ジェフ・ベックのアームテクニック徹底解説で詳しく解説しています。
Q4. 「哀しみの恋人達」もこのストラトで弾いている?
これは意外な事実です。ジェフ・ベックの代表曲「哀しみの恋人達(Cause We’ve Ended as Lovers)」のレコーディングでは、実はストラトではなく、セイモア・ダンカンから借りたハムバッカー搭載のテレキャスターが使われたと言われています。ストラトの音が「薄っぺらく感じられた」ためだそうです。名曲の裏にこんなエピソードがあるのも、ギターの面白いところですね。
まとめ:憧れで買っていい。ただし年代選びだけ間違えない
長くなったので、要点を整理します。
- ジェフ・ベックモデルは「実戦仕様の完成された道具」。憧れで買っても後悔しにくい1本
- ただし1991年発売の第1期(レースセンサー)と2001年以降の第2期(Hot Noiseless)で音が別物。年代選びが最重要
- ネックは太め。最初は違和感があっても、慣れると安定感という武器に変わる
- 迷ったら、完成された現行の新品がおすすめ。個性を求めるなら第1期中古も魅力
- 中古はプッシュスイッチとヒールで年代を見分け、ローラーナットの状態を必ず確認
憧れのギタリストのモデルを手にする喜びは、何物にも代えがたいものです。私自身、10年前にこのギターを連れて帰った日のことを、今でも幸せな記憶として覚えています。あなたも、年代選びのポイントさえ押さえれば、きっと長く付き合える1本に出会えるはずです。
まずは、気になっているモデルの今の価格をチェックすることから始めてみてください。
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この記事を書いた人:KOTOBUKI
中学でフォークギターを手にして以来、約40年ギターを弾き続けているギターオタク。高校・大学でエレキに転向し、クラプトン、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジ、イーグルスなどウェストコースト系まで幅広くコピー。大学時代にはギターコンテストで受賞歴があり、楽器店でギター講師のアルバイトも経験。40代後半からはアドリブ習得のため、是方博邦氏・宮脇俊郎氏に師事。
所有ギターは16本。ジェフ・ベックモデル(ストラト&レスポール)、クラプトンモデルのストラト、EVH AXIS、Martin D-28、YAMAHA セミアコ SA1200 ほか。コピーした曲は200曲以上。憧れのギタリストのシグネチャーモデルを実際に所有して弾き比べる、ファン兼プレイヤーの視点で機材を語ります。
